双極性障害(躁うつ病)|飯田橋ウエルネスクリニック|女医の心療内科・精神科 メンタル

双極性障害(躁うつ病)
bipolar

「うつ状態」を繰り返していませんか?
その間に、すごく調子が良くて活動的な時期はありませんか?
そして、その後に「うつ」になるのではありませんか?
こうした気分と活動性に大きな波があって、日常生活や人間関係に支障を来しているような場合は、双極性障害の可能性があります。

双極性障害とは

気分が高揚し、活動性が上がって、思考の回転が速くなる「躁状態」と、逆に、気分が落ち込み、何もやる気がおきず、今まで出来ていたことすら出来なくなり、思考のスピードも遅くなる「うつ状態」が、同じ人に相前後して生じる病気です。 まるでシーソーのように頻回に繰り返す人もいます。また、気分は落ちているのに落ち着かず活動性が上がって見える(堂々巡りの事が多いのですが)など、両方の状態が混合している場合もあります。

躁状態の人は自分の病気に気が付きにくい

気分、活動性、思考速度が上がるとは大変結構なことではないかと思われる方が多いと思います。躁状態になった本人もそう思っています。しかし、「躁状態」は急激に進行します。頭の回転が速くなって活動的であっても、丁度良い状態を通り越して、思考や行動に纏まりがなくなり、空回りしてしまうことが多いのです。次から次へと考えが飛ぶため、集中して取り込むことができなくなります。気分が高揚し、自分が会社や組織を動かしていると勘違いしたり、「遅い!」と大声で叱りつけたりするなど、尊大な言動が多くなり、トラブルが生じやすくなるため、周囲と次第に解離していきます。気が大きくなってお金があまりなくても高額の買い物をする等、浪費が目立つようになります。そうこうするうちに周囲の人たちは異常に気がついて、心配したり、本人の行動を抑えようとするのですが、躁状態の人はそれを自分に対する妨害と捉え、怒りだしたりします。自分では何でもうまく素早くやっているつもりでも、周囲と解離しているために「空回り」となって実効は上がらず、周囲との関係は悪化します。それでも本人は自分が病気だとは気づかないことが多いのです。おそらく、躁状態の時は、本人は「これが自分の本来の姿だ」と思い込んでいるからです。今までとは違う「本来の自分」をなかなか手放すことができません。しかし、躁状態は「本来の状態」ではないため、どこかに無理があり、エネルギーを過剰に使って枯渇してしまうかのように、気分も活動性も思考速度も落ちてきてしまいます。そして、躁状態の後にうつ状態がやってくることが多いのです。

軽い躁状態の場合

「軽躁状態」といって、軽度の躁状態が見られる場合があります。躁状態が軽い場合、周囲の人からも見落とされることが多く、「あの人元気になってきたね」程度で済んでいることがあります。本人はもとより気が付きません。しかし、どこかに無理、「空回り」が生じていて、後に「うつ状態」となることが多いのです。

うつ状態も「うつ」と気づかないことがある

うつ状態の時は、気分が重く、つらくなってくるので、こころの不調に気づくことが多いのですが(うつ病ページをご覧ください)、身体症状のみのことがあり、その場合は、自分が「うつ状態」であると気が付かないことがあります。「この体の症状さえとれれば元気に動けるのに」と考えて、内科の病院に頻回に受診し、なかなか改善しないということがあります。

双極性障害の人はどう受診するのか

躁状態や軽躁状態の人はなかなか受診しません。本人が「これが本来の自分」と思っているからです。多くは病気のことを知っている家族が気づき、受診を促すことが多いようです。本人のことをよく知っている会社の上司が受診を勧める場合もあります。
うつ状態の時の方が、つらい気持ちになって自ら受診することが多いのですが、躁状態に転じると症状として捉えることが難しいため、治療は中断しがちになります。
何回か躁状態、うつ状態を繰り返していると、自分の症状を客観的に捉えることができるようになり、治療の必要性や効果を感じることができるようになるのですが、それまで長い時間を要しており、社会生活や家庭生活で様々な問題、困難を経験していることが多いのです。生活や人間関係の破綻にまで至ることもあり、そうなる前に治療に繋がることが大切です。

双極性障害はどう治療するのか

まずは、今、困っている症状に対する治療を優先します。各状態に応じて抗躁薬や抗うつ剤を服用することもあります。しかし、双極性障害の治療では、気分の振幅を小さくすることが一番大事です。気分安定薬により「躁状態」という山の高さを抑え、「うつ状態」という谷の深さを浅くするのです。また、どちらの状態でも、睡眠障害がみられますので、睡眠を中心として十分な休養をとることも重要です。

再発を防ぐ

再発させないということが大変大事です。それには気分の振幅をなるべく小さく安定した状態に保つことが重要です。だれにでも気分のさざ波は存在します。それが大波にならないようにするのです。気分安定薬を服用し続けるのも方法の一つです。また、自分がもっとも安定する気分、活動性の高さ、ペースを知り、その状態に保つことも大事です。
臨床的な経験からすると、その「丁度よい状態」というのは「本人が納得して十分だと思える状態」よりも少しだけ低い状態が当てはまるようです。「腹八分目」というとわかりやすいかもしれません。ちょっとだけ不満足という状態がいわば「気分に余裕のある状態」で安定するのです。主治医とよく相談しながら自分の「丁度よい状態」をみつけてください。

指標としての睡眠

睡眠の状態は客観的でわかりやすい指標です。躁状態の時も、うつ状態の時も「朝早く目が覚める」という症状がよくみられます。
躁状態の時は、朝早く、パッと目が覚めて、すぐに動き出します。睡眠時間が短くても、すこぶる快調で、疲れを感じず、終日動き回っています。こうした変化を家族は敏感に感じとっているようです。奥さんが「この人最近朝早く起きるようになって、私のことを『まだ寝てるのか!』って起こすんです。また躁になったのではないですか」と旦那さんを連れて来られた例がありました。その通り躁状態でした。
うつ状態では、朝早く目が覚めますが、気分、体調ともにすぐれず、すぐには布団から起き上がれません。悶々とした気分で朝を迎えることになります。朝から疲労感、倦怠感を感じ、ひどく億劫です。
このように睡眠の状態と覚醒時の気分はわかりやすい指標となります。

「うつ状態」も「躁状態」もずっと続くことはありません

躁状態の時は「これが本来の自分で、ずっとこの状態が続く」と思い込み、行動に抑制が効かなくなります。うつ状態の時は「この状態が自分の真の姿で、このつらい気持ちがずっと続くのだ」と思い込み、絶望的になります。躁状態もうつ状態も「今の状態がずっと続く」という間違った認識から治療に抵抗を感じたり、絶望的になったりします。しかし、いずれの状態も、ずっと続くということはありません。いずれの状態も必ず治まります。治療しなくても治まることさえありますが、また症状が繰り返されて、その度に社会生活が障害されることが多いため、専門医による治療が必要です。
うつ状態の時には、決して自殺を実行しないでください。必ず治りますから。
躁状態の時には、周囲の言葉に耳を傾け、アドバイスを受けるようにしましょう。
そして、受診してください。